読売新聞に医療ルネサンスという連載がある。
ネットに載るのが遅いのでまだ見られないが、手入力で転記します。
※追記:10/11:記事全文はこちら

今時うつ病事情4
 「どうしました?」という医師に、「最近、気分が落ち込んで、何もやる気がおきません」と30代前半の会社員は答えた。
 「食欲はどうですか」
 「ありません」
 「よく眠れていますか」
 「いいえ」
 「疲れていますか?」
 「はい」
診察ではこんな調子だったようで、わずか数分で終了。
「うつ病ですね。休養が必要だと思います」と診断書が出たという。
 「ほんとうは症状はありませんが、インターネットで見た通りにうつ病の症状を伝えたら、簡単に診断書が出ました。おかげでよく休めていますよ」
 ある産業カウンセラーは、休職中の会社員との4回目の面談中、そう打ち明けられた。「今の仕事が向いていないので、嫌で休みたかったんです」という。いつも話題は職場への不満ばかりで、元気そうだ。処方された抗うつ薬は「飲んでいませんよ」と話す。


何なんだ、これは。最近うつ病という病名が一般的になってきたからなのか、こういう詐病まで出ているとは。。

似たような例は本にもいくつかある。
香山リカの「「私はうつ」と言いたがる人たち 」の紹介文は次の通り。

「私はうつ」と言いたがる人たち (PHP新書)
香山 リカ

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ある日の診察室
「私うつ病みたいです。休職したいので、診断書ください!」

この思い込みにまわりは迷惑、ほんとうに苦しんでいる人が泣いている。
仕事を休んでリハビリがてらに海外旅行や転職活動に励む「うつ病セレブ」、
その穴埋めで必死に働きつづけて心の病になった「うつ病難民」。
格差はうつ病にもおよんでいる。
安易に診断書が出され、腫れ物に触るかのように右往左往する会社に、
同僚たちはシラケぎみ。
はたして本人にとっても、この風潮は望ましいことなのか?

新しいタイプのうつ病が広がるなか、ほんとうに苦しんでいる患者には
理解や援助の手が行き渡らず、一方でうつ病と言えばなんでも許される社会。
その不自然な構造と心理を読み解く。


この本の中では本当に苦しんでいる人は「うつ病難民」と呼んでいるようだが、先の詐病といい、この本にある例といい、うつを取り巻く環境も少し変わってきたようだ。

後者の本はamazonのなか見検索で目次や最初の数ページが読める。
興味深い本なので後で読んでみたいと思う。

最初の例の方では診察にわずか数分などと書かれているが、これは明らかにおかしい。本文中にも別の医師が述べているように「初診では必ず1時間近くかけるようにしている。症状だけではなく、仕事や生活全般について質問し、患者の人物をできるだけ理解するように努める。」とある。

わずか数分で診察できてしまうのはDSMという簡単な診断基準があるから。「インターネットで見た通りにうつ病の症状を伝えたら」とあるようにそれらの条件があてはまれば「うつ病」と疑われるとされる。

ただ、たったそれだけで簡単に診断書が出されてしまうものなのだろうか?
自分のときだって最初に心理士から細かく症状などをヒアリングされ、その上で診察され、うつ病だと診断された。

後者の本の紹介文にもあるように、このような「ニセうつ」患者が増えると困るのは本当にうつ病で苦しんでいる人だろう。

amazonのレビューの1つに
「本人(注:筆者のこと)の意図は、「うつもどき」の人までうつ病にしてしまっている社会への問題提起にあるのだが、 一部の「管理職」「経営者」は、「それみたことか、お前はうつではない」 という時の材料にこの本を使いかねない。」
という言葉がある。まさにそうなりかねない。

一方で、本当にうつで困っている人も「うつ病と言えばなんでも許される社会」に甘えているのではないかと自責感を感じてしまう。そう感じる人ならば本当のうつ病なのだが、でもやはり「自分は病気のせいにばかりしているのではないか」と思うこともある。

なお、非定型うつ病や躁鬱病など、一時的にはうつには見えないうつ病もあるので、なおさら難しいことも付け加えておく。