昔はささいなことでもネタにしていたような気がするが、今はツイッターですらつぶやくネタも何もないので、最近読んだ本を羅列してみる。

警視庁科学捜査最前線 (新潮新書)
今井 良
4106105756

本書を読もうと思った動機は「殺人犯はそこにいる」という本でいわゆる足利事件でDNA鑑定が科学的根拠として使われたもののその杜撰さに呆れ、現代ではどうなのかを知ろうとしたことから。本書でも足利事件については触れているが「技術の進歩」により精度があがったという程度。その時点で最先端と言われる技術でも未成熟なものもある。確かに本書は最新の技術やツールがたくさん紹介されていて、捜査にも活用されている実態はわかる。救いなのは最後は地道な捜査があくまで基本であるとしていたところ。

関連
殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件
清水 潔
4104405027

読んでいる途中から憤りを感じながら読んだ。警察、検察、司法、メディア、そして真犯人に。本書は足利事件を含む北関東連続幼女誘拐殺人事件を追ったノンフィクション。警察発表のものをそのまま伝えるのは報道とは言えないと、この記者の取材姿勢を見て思った。数々の冤罪はあるが、こうして作られるのかとも思った。もし不当に逮捕され、脅迫めいた取調べを受けたらこう言おう。「刑事訴訟法319条を読み上げてください」と。

「うつ」は病気か甘えか。 今どきの「うつ」を読み解くミステリ
村松 太郎
4344025652

自分はうつ病と診断されている。たまにその病名に甘えているのかなと思わないでもない。そこへこんなタイトルの本が出たので買わずにはいられない。いわゆる「新型うつ」っぽい事例を出されればそれは自分は明らかに違うと思う。世の中の「うつ病」に対する考え方がこんな具合に拡大解釈されるようになってきた、ということが書かれていると思っていいのか。今、本当に苦しんでいる人は本を読む気力もないだろうけど、そういう人は読まないほうがいいかも。(と書いている自分は何なんだ。。)

会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから
大西 康之
4822250172

三洋電機が消えていった過程とその後の元社員たちの転職事例などがまとまっている。三洋の経営危機が表面化したのは2004年の新潟中越地震による半導体工場の被災と言われている。ちょうどその頃自分は一介の派遣社員として三洋内部にいた。内部にいて聞く情報と外部で流されている情報の落差に戸惑っていた。その前後に何が起きていたのかが、本書によってまとまった形でわかった。自分が所属していた職場の人たちはいまはいずこ。。こういったことは今後も他社でありうるというのもわかるように思う。

メールはなぜ届くのか (ブルーバックス)
草野 真一
4062578255

情報処理系の資格の勉強をした人にしてみれば知っているような基本的なことだが、自分は携帯電話のメール(いわゆるキャリアの方)の仕組みを知らなくて、本書でわかった。「IT知識は万人が持つべき基礎素養」を持論とする著者はIT系の専門家ではない。国内で初めて子供向けプログラミング教室「TENTO」を設立した一人。そういう経緯もあってか、わかりやすさは万人向け。「枯れた」技術であるメールを中心としたインターネットの仕組みについてわかる入門本。

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)
水野 和夫
4087207323

資本主義はもはや限界ではないか。利潤をあげるはずの「周辺」が、地理的になくなり、サーバー空間でもなくなったら、もはやどこへも広がる領域がない。今新興国と呼ばれる国のほとんどが日本のような生活を送ろうとしたらエネルギーも資源も足りない。さらなる「周辺」すらもうない状態では、資本主義は機能しない。「脱成長の定常状態」を維持することすら難しいらしい。代わりになるシステムは偉大なる思想家でも出てこなければわからないだろう、と。本書には書いてないけど、人口も爆発するしね。。