先日の連休中、初めて歌舞伎を見た。歌舞伎と言っても古典的なものではなく、新しいタイプのもので「歌舞伎NEXT」と銘打っている。
演目は「阿弖流為」(アテルイ:ATERUI)。主演は市川染五郎、他には中村勘九郎や中村七之助。
これは以前2002年に「劇団☆新感線」によって普通の演劇として上演された。当時も市川染五郎が出ていた。それを今回歌舞伎化したもの。
で、感想等を書きたいところだが、不満の方が先に来てしまう。
アテルイ


公式サイト

座席が二階の左側というところで舞台を正面に見るところではない。挿入した画像では黒丸のついたあたりにいた。この座席表を見るといかにも舞台も花道も全部見えるかのようになっているが、実際には灰色で塗りつぶしたあたりが全然見えない!
花道はおそか、舞台の左袖すら見えない。
今回なぜかその左袖やその花道の当たりで何か台詞を言うことも多かったが全く見えない。
新橋演舞場


二階席の座席の舞台方面の壁に一応テレビモニターがあって、それで様子は何となくわかるが、照明が当たって誰が立っていても全体に白っぽくて区別がつかない。声と台詞で区別するしかない。
チケット代3000円をケチったがためにこうなってしまった。同じチケット代なら3階の正面でも良かったかもしれない。
せっかく花道で「飛び六方」などしても本物が見えない。。

そして、肝心の台詞も補聴器をつけてはいたので音としては聞こえていたが、何と言っているのか聞き分けられなかった。語音識別ができない。だから、古典歌舞伎よりもかなりわかりやすい台詞にも関わらずさっぱりわ分からない。部分的には分かるけど、部分的にしか分からない。一部が分からないのではなく一部しか分からない。。
他の人にも分かりにくいのかというとそうでもないらしい。というのも笑える場面もあり、そこではどっと会場全体に笑いが起きるが、自分には何と言ったのかわからないので笑いようがない。もう毎度のことである。

「阿弖流為」自体は高橋克彦の小説「火怨」を読んでいたのでよく知っていたし、これに感銘を受けたからNHKBSにもわざわざ加入してドラマを見たし、今回の舞台も見ようと思ったほどだ。だから大筋のところはわかっていたので想像で見ていたけれども、舞台の方は小説を基にした訳ではないので全く設定が違う。大まかなところしか合っていない。市川染五郎は日本の歴史の漫画で阿弖流為の存在を知ったという。では高橋版小説の方は知っているのだろうか?何せ八世紀頃の東北の歴史的資料などはほとんどないだろう。だから細かいところはどうにでも解釈できるから、小説もテレビドラマも舞台も全部微妙に設定が違う。
高橋版小説の阿弖流為の描かれ方が圧倒的なので、そのイメージと比較すると他がどうにも納得できぬ。

不満ばかりあげても仕方ない。舞台の台詞もよく分からなかったが、売店で台詞を起こしたような本が売っていたのでそれを買った。まだ途中までしか読んでいないが、読んでみると「ああ、そういうことを言っていたのか。そういう設定だったのか」と分かる。
上演時間が思いの外長くて(というか歌舞伎というのはそういうものらしい)、終演時刻が終電に間に合うか微妙だったので、メインの上演が終わったところで席を立ってしまった。その後カーテンコールというか、出演者が勢ぞろいして挨拶でもしたのかどうかは分からない。ちょっともったいなかったな。いろいろなことか。。。

阿弖流為 (K.Nakashima Selection)
中島 かずき
4846014576

↑今回の舞台の台詞本

↓個人的にお勧めの本
火怨 上 北の燿星アテルイ (講談社文庫)
高橋 克彦

火怨 上 北の燿星アテルイ (講談社文庫)
火怨 下 北の燿星アテルイ (講談社文庫)
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